Polycafe@Polyglot Blog

日常生活に多言語を

🇦🇫アフガニスタン・ペルシャ語:カーフのはなし

 最近ほど日本人に関するペルシャ語の記事をネットで読んだことがあろうか。

www3.nhk.or.jp

 

 アフガニスタンのジャララバードで中村氏が殺害された件は、即日、ツイッターで広く報道されていた。また、アラビア(ペルシャ)文字で"ناكامورا#"というハッシュタグがつけられた、アフガニスタン人と思われる人を中心とした追悼コメントも広くみられた。
※この人たちはパシュトー語でスピーチしているようだ。

  以前から本やテレビ、報道など彼の行なっているアフガニスタンでの灌漑事業や「医療」活動を聞いていたので、素晴らしい人だと思っていたが、貢献したアフガニスタンで殺害されるとは誰が予想しただろうが。しかも計画性がある可能性があるとのこと。コーランにあるようにイスラム教では本来、殺人は強く戒められている。アフガニスタンの人でなしは神を畏れないのだろうか。

 

 ところで、アフガニスタン大使館の情報によればアフガニスタンには公用語が二つある。ダリー語と上に述べたパシュトー語だ。ただし、実際には国内に44言語以上の言語が存在していると同大使館に言及されている。

 

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 僕はダリー語を知らない。知らずとも何となくわかるのはイランのペルシャ語を勉強したことがあるから。そしてテヘランに行ったこともあるからだ。何故それでアフガニスタンダリー語が何と無くわかるのか。何故ならペルシャ語ダリー語は別個の言語というよりも、方言の関係に近い。関西弁と関東弁の違いのような理解をして頂いて構わない。ただ、関東の人たちがテレビで関西弁を聞いているから「〜や」とか「〜してはる」、「〜ねん」など、関東では聞かない特徴を理解できるのに対し、ペルシャ語ダリー語はほぼそっくりなので実際には関西弁と関東弁よりもお互いの理解度は高いのではないだろうかと想像はする。

 

 ただもちろん国が違うし、歴史も違うので、骨格が同じであっても発音や語彙が違うことはある。発音の印象としてはダリー語の方がやや古風ではないだろうか。そんな中でダリー語のスピーチなどを聞いているとある特徴に気づく。例えばカーフの発音が違う。

 

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Wikipediaのカーフの項目:アラビア文字、アラム文字、ヘブライ文字

 標準のアラビア語を勉強したことがある方は分かると思うが、カーフの発音は喉の奥で舌の後ろと口蓋を狭めて発音するこすれたような「カ」の音である。しかしながら、標準的なペルシャ語ではこの音を保持しておらず、ガインと呼ばれる別のアルファベットの音と同じになってしまう。ざっくりいうと「ガ(g)」と発音するようになっている。しかし、アフガニスタンダリー語ではちゃんとカーフはカーフの発音で読んでいるようだ。

 

 アフガニスタンの話から若干それるが、この国も含めパキスタンやイランなどこの地域の言語はとても面白い。日本では知られていないだけで、とても豊かな文化や文法や語法を持った民族がいる。ある意味、今回日本に「アフガニスタンってやっぱりイスラムで過激派で危険な国なんだね」というような前時代的な先入観を助長させるような事件が起きてしまったのは痛ましい。だが、僕は早く犯人たちが捕まり、法の下で適正に処罰を受けることを望むと同時に、これをきっかけにアフガニスタン人たちが中村さんが行なったように自分たちの力で継続できる発展方法やイノベーションに乗り出してくれるようになったらと願うばかりである。

 

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