誰にも知られてなくなっていいじゃないか。
こういう本は大好きだ!
この本は
ブルシャスキー語、
ドマーキ語、
コワール語、
カラーシャ語、
カティ語、
シナー語、
カシミーリー語
そんなが好きな人向けの本。
もっとアバウト言い方をすればパキスタン関係🇵🇰の本とでもなろうか。白い表紙にでかでかと「フィールド言語学者」と書いてある。あたかも昔あった『××語をフィールドワークする』という本を連想させるかのようである。僕は昔、バルカンのスラブ諸語を研究されている先生が書かれた、🇲🇰マケドニア語が中心の『バルカンをフィールドワークする』が大好きで、繰り返し読み、言語学への興味を深めていた。
ところで、上にあげた言葉について、大抵の人は「なんだその言葉」としか思ってくれないだろう。でも日本のアイヌ語や琉球諸語がそうであるように、パキスタンでも国の片隅で(ウルドゥー語は違うけど)話されている独自の世界があるのである。
しかし、日本人がそんな風にしか思わないような言葉を一生懸命に研究し、未知の文化への扉を開けてくれる人がいる。これはよくも悪くもそんな仕事をしていらっしゃる記述言語学の吉岡先生(ブルシャスキー語)の、自身の仕事をベースにしたフィールドワークエッセイ。
もちろん言語学が単純に好きな人へもおすすめだ。僕はカティ語の挨拶表現と空間の関係がとても興味深かった。例えば、カティ語は近いところか遠いところか、上の方からか下の方からか、男か女か、はたまた単数か複数人なのかで挨拶が変わる言語であるとのこと。こんな面白い言葉がほかにあるだろうか。いや、パキスタンにあるんだからあるんだろうなぁ...
このように不思議な言語のことを知れば知るほど人間とは、言葉とはどういうものなのだろうかという疑問がなおのこと深くなる。木枯らしに吹かれながらベンチで読んで、そのように哲学してしまう冬の始まりであった。